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ワタミが糖尿病患者向け宅配弁当、「おいしい」と「健康」の両立を実現
2024.12.28 コラム
ワタミは2024年12月2日、糖尿病患者向けの宅配弁当の販売を開始した。ヘルスケア事業を行うおいしい健康(東京・中央)と共同で開発し、「ワタミ de おいしい健康」と名付けた。過去四半世紀で糖尿病が強く疑われる人は倍増するなか、ワタミは「おいしい」糖尿病食で、患者の治療をサポートする。
「おいしい」と「健康」の両立を目指した糖尿病患者向け宅配弁当「ワタミ de おいしい健康」。注文すれば毎日1食が家に届く仕組みだ。価格は、1食税込み690円(配送料込み)だ。全国のワタミ516の営業拠点を中心に案内し、各地の病院やクリニックにも展開する。
ワタミが10月に医療従事者に試食を提供したところ、案内開始から約1カ月で3079の施設から17245食の試食の申し込みがあった。11月25日からのテスト販売では、28日までの3日間で1万食の申し込みを受け付けた。
ワタミの渡邉美樹社長は、「『おいしい』糖尿病食を作りたかった。10年後には、1日10万食の販売を目指す」と意気込みを語った。
■1万2000以上のレシピからベスト20を商品化
「ワタミ de おいしい健康」を開発するうえで、「課題は『味』だった」(渡邉社長)という。おいしさを実現するために、次の3つにこだわった。
まず、使用する調味料を絞った。シンプルな味付けでおいしくすることを目指し、塩分も控えめにした。
さらに、食材そのものが持つ「おいしさ」を引き出した。食材の個性を活かすことで、過度に味付けをしなくてもおいしくできた。
三つ目は、食材の組み合わせを工夫したことだ。サバとトマトを組み合わせるなど試行錯誤を重ね、おいしさと栄養バランスを高め合うことに成功した。
宅配弁当のレシピ開発に協力したのは、おいしい健康だ。同社が提供するアプリでは1万2000以上のレシピを掲載しており、月間ユーザー数は130万人に上る。
野尻哲也CEOは、「今回の糖尿病患者向けのお弁当では、1万2000以上のレシピからベスト20を商品化した。これからもっと増やしていきたい」と語る。
今回のコラボは、「誰もがいつまでも、おいしく食べられるように」と考えながら進めた。誰もが好きなものを食べながら健康でいられること。年をとっても、病気であっても、好きなものを食べて健康でいられることを目指したという。
同社が提供するアプリでは、AIが献立てを提供してくれるのが特徴だ。プロフィールを登録すれば、あとは好きな食事を選ぶだけで栄養管理ができる。
アプリを活用した臨床研究にも取り組む。糖尿病患者が、おいしい健康のレシピで料理すると、血糖値が落ちるというデータも得た。
野尻CEOは、「かつて糖尿病には偏見があった」と話す。
「味気ない食事を強制され、治療を止めると『本人が悪い』と責められてしまっていた。私の父もそう。糖尿病食がおいしければ、父はもっと元気だったかもしれないという思いがある」
■糖尿病治療で、患者自身が食事管理を継続することは難しい
ワタミの宅食事業で、主力商品は冷蔵できるお弁当だ。他にも、子育て世代向けのミールキットをはじめ、単身者が使いやすい冷凍のお総菜、介護現場向けの商品を展開する。
渡邉社長は「今回、糖尿病や糖尿病予備軍の方々向けの商品をリリースする。糖尿病の食事管理はとても重要だ。深刻な社会問題でもある」と語る。
実際に、1997年から糖尿病が強く疑われる人は2倍に増え、2022年時点で1409万人に上る。
朝日生命成人病研究所付属医院で診療部長・糖尿病内科部長・治験部長を務める糖尿病内科医の大西由希子医師によると、糖尿病は暴飲暴食だからなるわけではない。もともとインスリンが出にくい体質だとなりやすくなり、初期には自覚症状がないので治療が遅れやすい。血糖値が慢性的に高い状態が長期間続くと、失明など命に関わるリスクがある。
大西医師は、「治療するためには、食事療法と運動療法がとても大切だ。その次に薬物療法がくる。医師は薬物しかコントロールできず、食事と運動を実施するのは患者自身だ」と指摘する。
その中で、患者が食事を管理するのは難しい現状がある。栄養学や糖尿病について知識が不足していたり、誘惑との葛藤があったりする。外食が多かったり、食事時間が不規則だったりする患者もいる。
そのため、継続することが難しい。「毎日毎食をつくるのは大変だし、面倒だ。いろいろ我慢が必要だし、もっと食べたいという気持ちも出てくる」(大西医師)
大西医師は、「『ワタミdeおいしい健康』のお弁当なら、おいしくて健康的で患者の負担が少ない。これを食べていれば大丈夫だと、安心して紹介できる。おいしいものを食べながら治療ができるのは、画期的なことだ」と太鼓判を押した。
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